惑星ザムザ

この展覧会は2022年2月より所有者様、3月に行政との調整を始め、コロナが終息していた5月GW中に開催、好評につき翌週末の2日会期延長をした。都心に位置する6階建・1200㎡・コンクリート造の古い建物は、その後リノベーション施工を予定していた株式会社欧友社様の会場提供という多大なるご協力を頂いた。
10日間で4821名(高校生以下を除く)の来場者があり、チケット収入のみで運営費を賄う事が実現した。

外部リンク

https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/25531

https://www.tokyoartbeat.com/events/-/2022%2Fplanet-samsa

https://artscape.jp/report/review/10176566_1735.html

【開催概要】
布施琳太郎による過去最大規模のキュレーション展『惑星ザムザ』が、新宿区に位置する製本印刷工場跡地の広大な敷地を会場として開催されます。

東京では二年ぶりのキュレーション展となる『惑星ザムザ』は、「テキスト以前の物質」を出発点として、総勢17名の作品が展示されます。
本展のタイトルは、110年前にフランツ・カフカによって執筆された小説『変身』の主人公グレゴール・ザムザの名前を引用し、名付けられました。極限までテキストにあふれ、善悪や虚実が混ざり合った今日の社会のなかで、インクや唾液、電気信号、埃、塩基配列などの物質を通じて、未来を遺し、書き、記し、物語り、撫で、描く方法が模索されます。
新陳代謝する東京のなかで、迷路のように入り組んだ工場跡地を巡り、芸術作品と出会う体験は、展覧会の魅惑と可能性を再確認する機会となるでしょう。

また、会期中にはいくつかのイベントも予定されているので布施琳太郎(@rintarofuse)のTwitterアカウントも要チェックです。

※本展は6フロアのビルを使用した展覧会ですが、エレベーターの用意がありません。足の不自由な方、ベビーカーなどを利用されている方への対応ができませんこと、心よりお詫び申し上げます。

日程:2022年5月1〜8、14、15日
時間:12:00-20:00(最終入場19:00)
入場料:1000円
住所:162-0834 東京都新宿区北町41
アクセス:都営大江戸線「牛込神楽坂」駅 A2出口から徒歩1分、東京メトロ・JR「飯田橋」駅から徒歩10分
主催:株式会社ユニーク工務店・リレーションシップ
企画運営:田中勘太郎、布施琳太郎、株式会社ユニーク工務店・リレーションシップ
キュレーション:布施琳太郎
デザイン:八木幣二郎
協力:株式会社欧友社

展示:
青柳菜摘
石曽根和佳子
倉知朋之介
小松千倫
宍倉志信
竹久直樹
田中勘太郎
中村葵
名もなき実昌
BIEN
藤田紗衣
布施琳太郎
百瀬文
MES
オリア・リアリナ
横手太紀
米澤柊

【ステートメント】
いつの時代も、歴史や現実は、人々の想像力によって解釈され、語り継がれ、描かれることで組織され直し、ありえる/ないかもしれない形態へと何度でも変質してきた。この変質こそが、人間に可能な、最も知的で複雑な営みである。しかし極限まで情報化された今日の社会において、歴史や現実の再組織は学者や芸術家、政治家の特権ではなくなった。匿名の人々によって際限なく拡散する言葉とイメージによる織物は、それぞれの状況において、あまりに自由に、虚実や善悪を超えた言説を作り出していく。
だからこそ『惑星ザムザ』は、テキストの以前の物質から思考を開始する。それは芸術作品の制作の根拠を、書物的な理性ではなく、インクや唾液、紙、明滅、線、面、電気信号、塩基配列、振動、空気といったマテリアルに求めることだ。これら物質が、安定したテキストやコンテキストに到達することなく、身勝手な生命活動を開始した状況を観測することこそ『惑星ザムザ』の目的である。

ザムザとは、フランツ・カフカが110年前に書いた小説『変身』における主人公の名前である。ある朝、目を覚ましたザムザは、醜い虫になっている。彼の家族は、昨日までとはまったく異なる姿になってしまった彼を、これまで家族であった記憶に基づいてケアするが、そこに待っているのは際限ない孤独だ。
製本工場跡地を舞台とした本展が、『変身』を題材とするのは、それが布と糸のあいだで振動する物語だからである。物語に至るまでのザムザは、布地の販売員をしていた。布地、それはtextileであり、textの語源である。そしてtextileは、編まれた糸によって作られたものだ。この展覧会で僕が垣間見たいのは、編まれた糸がひとつの布地になることに失敗し続ける物語である。
その失敗から未来について考えたい。いくつものマテリアルが、見たこともない異形を形作る惑星で、私たちの生きる社会の未来について考えたい。そこでどんなテキストが書かれることができるのか、何を物語ることができるのか、どんな夢を見ることができるのか。

そのための旅路として、ここに『惑星ザムザ』を開催する。

(文=布施琳太郎)

【ごあいさつ】
新宿区のこの周辺には出版社が多く、古くより印刷工場・製本所の街として栄えていました。このビルも製本工場の跡地です。昭和20年代からの都市計画道路に面しており、計画に含まれる建築部分は数年前に切り離され、大久保通りから見える荒々しいコンクリート部が切断による痕跡です。一か月後には建物のリニューアルが開始され、数ヶ月後には次の印刷業が稼働します。変わらず存在する建築物という個体に対して、都市計画や不動産価値など人間の営みによって取り巻く環境はめまぐるしく変わり、その環境に建築が対応していく様は、新陳代謝を繰り返す東京の象徴です。そして印刷業界も紙からデジタルへと大きな転換期を迎えており、印刷業者が減るこの街は印刷工場等で使われていた建築が別用途として再利用され街を変えています。

今回の美術展示はこの建築の変わり目の隙間の中で数日間開催されます。美術を通して十数名のアーティスト達がそれぞれの思想を提示します。その思想達を包括したこの建築で、都市の在り方にも考えを及ぼす機会を提示したいと考えこの美術展を開催致しました。

(文=株式会社ユニーク工務店・リレーションシップ)

チケット購入は以下のリンクよりお願い致します。
https://wakuseizamuza.peatix.com